グレアム・オブリーに学ぶ限界を越える思想と精神性
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- 2025年8月17日
- 読了時間: 5分
グレアム・オブリー(Graeme Obree)は、1990年代に「アワーレコード(1時間走)」を二度樹立し、
1993年と1995年に世界選手権自転車競技大会の男子個人追抜競走で優勝している。
独創的な自転車ポジションと自作バイク「Old Faithful」で有名になったスコットランドのトラックレーサーです。
彼のトレーニング法は科学的なパワーメーターや最新のスポーツ生理学とは異なり、
かなり独特で「シンプルかつ直感的」でしたが、その中に多くの示唆があります。以下に詳しくまとめます。

1. 基本的なトレーニング思想
短時間・高強度中心
長時間のベースライドよりも、実際の競技で要求される強度に近い「苦痛の限界での努力」を重視しました。
シンプルさ
パワーメーターも心拍計も使わず、身体の感覚(苦しさ・限界感)でコントロール。
苦しみへの慣れ
彼にとって最大の武器は「肉体よりも精神」であり、限界の苦痛を受け入れる練習を重視しました。
2. トレーニング内容
彼自身や書籍『The Obree Way』などから分かっている主なメニューは次の通りです。
(1) 2分インターバル
内容: 全力の2分走 → 休憩(2〜3分)を数回繰り返す
目的: VO₂max向上・レースでの急激なペースアップへの対応
特徴: 2分という短さでも「全力」でやるため、酸素負債と乳酸耐性が鍛えられる
(2) 20分エフォート
内容: 20分間をほぼ限界に近いペースで走る
目的: FTP向上・アワーレコードの持続力強化
特徴: パワーメーターではなく「息が切れて話せないが持続できる」感覚を頼りに
(3) 「ターボトレーナー」での孤独な反復
ほとんど室内での固定ローラー練習
天候や環境に左右されず「集中して苦しむ」ことができるのを好んだ
彼は「外を走ると楽しくなってしまい、本当の練習にならない」と考えていた
(4) 筋力的アプローチ
特殊ポジションに耐えるための体幹と上半身の強化(腕立て伏せや自重トレーニング)
バイク上での安定性を重視
3. 精神面の鍛錬
「痛みの探求」
オブリーは「限界は体よりも心にある」と信じており、日々のトレーニングで苦痛を乗り越えるメンタルを養った。
孤独の中での集中
音楽もテレビもなし。ひたすら自分の身体感覚と向き合う。
4. 栄養・リカバリー
食生活はシンプルで、特に近代的な栄養戦略は行っていない。
ただし「消化が軽くパフォーマンスに支障をきたさないもの」を好んで摂取。
リカバリーについても「休養を取ることの重要性」はしっかり認識しており、無理に毎日追い込むことはしなかった。
グレアム・オブリーは「トレーニング法やバイク設計の奇才」として知られていますが、
それ以上に競技への姿勢や精神性が特異で、彼を伝説的存在にした大きな要素です。
以下、彼の思想や精神性を整理します。
1. 「反逆者」としての姿勢
伝統的な自転車界やUCIの規則に真っ向から挑みました。
代表例:彼が編み出した「タックポジション」や「スーパーマンポジション」はあまりに速すぎて禁止された。
オブリーは規則に縛られるよりも「どうすれば人間が最速になれるか」を最優先した。
その結果、既成概念にとらわれず、自分の直感を信じ抜く姿勢を貫いた。
2. 苦痛と向き合う精神
彼は「身体的限界よりも、心が諦めることでパフォーマンスは決まる」と信じていた。
練習でもレースでも「どれだけ苦痛に耐えられるか」が最も重要と語っている。
実際に彼のローラートレーニングは「テレビも音楽もなし」で、ただ自分の苦しみと向き合う孤独な時間だった。
つまり「痛みに慣れること」を精神的なトレーニングの核に置いていた。
3. 科学よりも“感覚”を信じる
パワーメーターや心拍計に頼らず、「自分の体の声」を唯一の指標とした。
「心拍数やパワーを見ても、本当に走るのは自分自身だ」という信念があった。
この姿勢は“人間そのものの可能性”にフォーカスした点で、当時のスポーツ科学志向とは対照的だった。
4. 自己表現としての競技
彼にとって自転車は単なる競技ではなく「自分自身を表現する場」だった。
だからこそ、市販の機材や伝統的な方法論に従わず、自作バイク「Old Faithful」や奇抜なポジションを選んだ。
これは「勝つため」というより「自分らしく挑むため」の選択だったと本人も語っている。
5. 脆さと強さの共存
オブリーは精神的な苦悩やうつ病と常に戦っていた人物でもある。
しかし彼はその苦しみを「苦痛を受け入れる強さ」に変え、競技で発揮した。
つまり、彼の強さは「精神的な脆さの裏返し」であり、だからこそ多くの人が彼に共感する。
まとめ
グレアム・オブリーの精神性は、
反逆心(常識に従わず、自分の道を行く)
苦痛を受け入れる勇気
科学ではなく人間そのものへの信頼
自己表現としての競技
脆さを抱えながらも挑戦する強さ
に集約されます。
彼は「勝利者」ではなく、「挑戦者」として人々の記憶に残り続けているんですね。
代表的な言葉
The rules are made by men, and they can be changed by men.
(ルールは人間が作ったものだ。だから人間によって変えられる。)
It’s not the legs that give up, it’s the mind.
(限界を迎えるのは脚ではなく、心だ。)
I didn’t want to beat the rest of the world. I wanted to beat myself.
(私は世界を打ち負かしたかったわけじゃない。自分自身を超えたかったんだ。)
The bike is just a machine. The real race is in the head.
(バイクはただの機械だ。本当のレースは頭の中で行われる。)
個人的に彼のように生涯アマチュア選手でスポンサーの資金もなく、
自分自身の努力と創意工夫で世界選手権に優勝したり、アワーレコードを樹立したりと偉大すぎる功績である。
彼のアワーレコードのチャレンジ時の観客が皆無なのと、クリスボードマンのチャレンジ時での観客の人数の多さを比較すると
特にオブリーの孤軍奮闘が目立ちます。
今日のようにSNSやインターネットも無く、
情報も非常に限られている中で孤独に努力し創意工夫で人生を乗り切っていく、彼の姿勢に尊敬と感謝しかないです。








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