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生きづらいと感じたら。昔の哲学者がくれる7つのヒント

8 時間前
読了時間: 7分

ヘラクレイトス、孟子、ラッセルたちの言葉を、身近な例えで

はじめに

「なんか、息苦しい」。そう感じているのは、あなただけではありません。

SNSを開けば誰かと比べてしまう。もっと効率よく、もっと成果を、と急かされる。日本でも海外でも、10代でも50代でも、同じような声をよく聞きます。

でも実は、2500年前の人たちも同じことで悩んでいました。そして、けっこう使える答えを残してくれています。

この記事では、難しい哲学の話はなるべく抜きにして、毎日の暮らしに置きかえながら7つのヒントを紹介します。

1. ヘラクレイトス:同じ川には、二度入れない

古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトス(紀元前500年頃)は、こう言いました。

同じ川に二度足を踏み入れることはできない。

川の名前は同じでも、流れる水は毎秒入れ替わっている。入る自分も、昨日の自分とは少し違う。つまり、ずっと同じでいられるものなんて、最初からないということです。

毎日同じ道を歩いていても、季節や気分で景色はちがって見えます。去年できたことが今年できなくても、それは失敗ではなく、ただ「今の自分」がそこにいるだけです。

ヘラクレイトスは「病気があるから健康がありがたく、疲れがあるから休息が心地いい」とも言っています。長い冬のあとの春が特別に感じられるのと同じで、つらい時期にも意味はあります。

ヒント:「元に戻らなきゃ」ではなく、「次の形に変わっている途中」と考えてみる。

2. 孟子:あなたの中には、もともと善い芽がある

中国・戦国時代の思想家、孟子(紀元前4世紀頃)は「人はもともと善い」と考えました。

たとえば、小さな子が井戸に落ちそうになっていたら、誰でも思わず「危ない!」と手を伸ばす。お礼や評判のためじゃなく、反射的に。孟子は、その気持ちこそ人が生まれつき持っている「善い芽」だと言います。

自分を責めてばかりの日は、思い出してください。その芽は、あなたの中にもちゃんとあります。

苗を引っぱってはいけない

孟子には、こんな話もあります。苗の育ちが遅いのにイライラした農夫が、一本ずつ引っぱって伸ばした。翌日、苗は全部枯れていた。

これ、勉強や仕事でもよくある話です。テスト前に一晩で詰め込んでも、すぐに忘れてしまう。毎日少しずつのほうが、ちゃんと身につきます。成長には、自分のペースと休む時間が必要です。

ヒント:結果が出ない時期は「ダメな時期」ではなく「根っこが育っている時期」と呼んでみる。

3. バートランド・ラッセル:意識を、自分の外へ

イギリスの哲学者ラッセル(1872〜1970年)は、ノーベル文学賞も受けた天才です。でも若いころはとても不幸で、生きるのがつらかったと振り返っています。

そんな彼が見つけた答えは、シンプルでした。自分のことばかり考えるのをやめて、外の世界に興味を持つこと。

悩みは、自分の内側だけを見つめていると、どんどん大きくなります。でも、料理に集中しているときや、好きなドラマの続きが気になっているとき、悩みのことはすっかり忘れていますよね。夢中になれるものがあると、その間だけは心が軽くなるんです。

ラッセルは「適度な退屈に耐える力も、幸せには必要だ」とも言っています。スマホで刺激を浴び続けると、静かな楽しみを感じられなくなるから。そして『怠惰への讃歌』では、「働くことこそ美徳」という考え方がむしろ人を不幸にしている、とまで書きました。

ヒント:悩みがぐるぐるしてきたら、自分と関係のない何かを一つ調べてみる。星でも、鳥でも、好きな食べ物の歴史でもいい。

4. ストア派:変えられることだけに集中する

古代ローマのエピクテトスは、奴隷として生まれ、のちに自由になって哲学を教えた人です。彼の教えの中心はこれです。

物事には、自分の力でどうにかなるものと、ならないものがある。

天気や電車の遅れは、どうにもなりません。でも、傘を持っていく、早めに家を出る。これは自分で決められます。どうにもならないことに怒るより、自分にできることに集中したほうが、ずっと楽になります。

人生も同じです。人の評価や世の中の流れは変えられない。でも、自分がどう受け止めて、どう動くかは選べる。エピクテトスは「人を苦しめるのは出来事そのものではなく、出来事についての思い込みだ」とも言っています。

ローマのセネカも「人生は短いのではなく、私たちが無駄にしているだけ」と書きました。

ヒント:悩みを紙に書いて、「変えられる」「変えられない」の2つに分ける。力を使うのは「変えられる」側だけ。

5. 老子と荘子:水のように、役に立たなくてもいい

中国の老子は「最高の生き方は水のようなものだ」と言いました。水は争わず、形を変えながら低いところへ流れていく。でも長い時間をかけて、硬い岩さえ削ってしまう。力ずくより、しなやかなほうが遠くまで行けます。

老子にはもう一つ、有名な言葉があります。

足るを知る者は富む。

「まだ足りない」と思い続ける人は、どれだけ持っていても満たされない。スマホを新しくしても、すぐに次の新機種が気になる。服も家電もキリがありません。でも、お気に入りのものを大切に使っている時間は、案外いちばん満ち足りているものです。

荘子は、もっと大胆です。曲がりくねって材木にならない大木は、誰にも切られずに何千年も生きた。役に立つ木ほど、早く切られてしまう。これを「無用の用」と言います。

昼寝や、ぼーっと空を眺める時間は、何の役にも立たないように見えます。でも、そういう時間があるからこそ、また頑張れる。役に立たないことにも、ちゃんと意味はあるんです。

ヒント:「もっと」と思ったら、今持っているもので気に入っているものを3つ数えてみる。

6. ブッダとエピクロス:二本目の矢を受けない

ブッダには「二本の矢」というたとえがあります。生きていれば、ケガや失敗、嫌な出来事という一本目の矢は必ず飛んでくる。でも多くの人は、そこに「なんで自分だけ」「もう終わりだ」という二本目の矢を、自分で刺してしまう。一本目は避けられなくても、二本目は防げます。

ブッダはまた「中道」を説きました。楽器の弦は、張りすぎれば切れ、緩めすぎれば鳴らない。ちょうどいい張り具合のときに、一番いい音が出ます。頑張りすぎと、投げやりのあいだ。人も同じです。

ギリシャのエピクロスは「快楽主義」で知られますが、実際の暮らしはとても質素でした。お腹がすいていれば、パンと水でも最高のごちそうになる。そして彼が何より大切にしたのは、気の合う友だちとの時間でした。

ヒント:つらいことがあったら「これは一本目の矢? 二本目の矢?」と自分に聞いてみる。

まとめ:7つのヒント

| # | ヒント | 誰の言葉 | | --- | --- | --- | | 1 | 変わることを怖がらない | ヘラクレイトス | | 2 | 自分の中の善い芽を信じる | 孟子 | | 3 | 焦らず、自分のペースで育つ | 孟子 | | 4 | 意識を自分の外へ向ける | ラッセル | | 5 | 変えられることだけに集中する | エピクテトス | | 6 | 足るを知る。役に立たない時間も大切にする | 老子・荘子 | | 7 | 二本目の矢を自分で刺さない | ブッダ |

昔の哲学は、息苦しさを一瞬で消す魔法ではありません。でも「2500年前の人も同じことで悩んでいた」と知るだけで、少し肩の力が抜けるはずです。

川の水は流れ続けるし、冬のあとには春が来る。焦らず、自分のペースでいきましょう。

※ 眠れない、食べられないといったつらさが続くときは、一人で抱えこまず、身近な人や専門の窓口に相談してください。

参考文献

  • 『ソクラテス以前哲学者断片集』(ディールス/クランツ編)ヘラクレイトス断片 B91、B111

  • 『孟子』公孫丑上(四端、浩然の気、揠苗助長)、告子上(性善、牛山の木)

  • バートランド・ラッセル『幸福論』(The Conquest of Happiness, 1930)

  • バートランド・ラッセル『怠惰への讃歌』(In Praise of Idleness, 1932)

  • エピクテトス『提要(エンケイリディオン)』第1章、第5章

  • セネカ『人生の短さについて』

  • マルクス・アウレリウス『自省録』

  • 『老子』第8章、第33章

  • 『荘子』人間世篇(無用の用)、斉物論篇(胡蝶の夢)

  • 初期仏典『箭経(サッラ・スッタ)』(二本の矢)

  • エピクロス『メノイケウス宛の手紙』

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